MORG RECORDING 2013

MORG RECORDING 2013



2013年になり、MORGのシステムも多くの変更を経てひと段落した感がありますので、
今回はレコーディング時の解説をしてみようと思います。


まずはドラムのレコーディングから。
ドラムのレコーディングには主にOLD NEVEのラックを使います。



こちらは奥側からSHEP/NEVE 1073 x4、NEVE 31102 x2、NEVE 1066 x2です。
SHEP1073は今や貴重なNマーク入りで、比較視聴しましたがまさに本物のNEVEサウンドです。
運搬時にも構造上NEVE 1066や31102よりトラブルが起きにくいため非常に気に入って使っています。
門垣の師匠の古巣がEGGS&SHEPであったということもSHEPへの思い入れを強くしています。

それぞれ左から1-8CHとして、1-2CHがオーバートップ、3CHがキックのオンマイク、4CHがキックのオフマイク、
5CHがスネアのトップ、6CHがスネアのボトム、7-8はギター等同時に収録する場合にあけています。

レコーディング時にEQもほぼ必ず使います。
NEVEのEQは本当にマジカルで何をやっても本当に音楽的です。
想像以上に派手にEQをして音作りをしても素晴らしい結果が得られます。

オーバートップはNEVE 33609/Aにチェーンされています。



NEVEの名機中の名機ですが、MORGではアンプの比較試聴の結果、BA512を採用しました。
SHEP 1073と相まって、嫌なピークのないドラムサウンドを収録できます。


タム類はVINTECH MODEL 473を使っています。



理由はOLD NEVEのチャンネルが足りないから!…というわけではなく、これはこれでタムに非常に相性のいいプリと思います。
むしろMORGではタムにしか使いません。
OLD NEVEと比べると高域にわずかにピークがあり、サウンドも現代的です。
しかし、それがタムのアタックの部分に非常にマッチすることと、EQも非常にタムで使いやすいので重宝します。
ちなみにMORGの473はCH1のフェイズスイッチのみ逆になっているというVINTECHによくあるミスがある個体です。

ライドやハイハットなどはSSL 9000Kのプリアンプを使います。



ピンポイントの金物はNEVEよりSSLのほうが明るく、混ざりも良いので最近はこちらを使っています。

マイク類は色々使い分けますが大体決まっています。
マイクスタンドは高砂、KEITH MONKS、古いK&Mです。



オーバートップはNEUMANN KM84、U87、AKG C414EB、C451あたりを使います。

スネアはGEFFEL UM70、TELEFUNKEN M80、SHURE SM57USA(アルニコ磁石)が多いです。



スネアにもPultec EQP-1A3をかけます。感動してしまうくらい音が太くなります。

キックはMD421、ATM25、D112など。キックのオフマイクはNEUMANN U47FETを使います。
U47FET→SHEP1073→Pultec EQP-1A3で録るキックの音は涙が出るほどBIGでFATです!



タム類はATM25、MD421が多いです。稀にC414を使います。



ハイハットはC451かKM84、たまにSM57です。

ライドはC451が多いです。C414にする時もあります。

オフマイクを立てる場合はモノラルだとRCA 77DXをP-1でドライブ。


これらのEQもたまにアサインして使います。

ステレオの場合はC414EB、U87を立てて、ISA115HD→SSLバスコンプが多いです。


ベースはMANLEY TUBE DIを使います。



このDIはほんとにいい音で、要らないピーク類の全てを除去してくれる感じです。
ミックスの案件でも素材が気に入らない時に通しなおすこともあります。

アンプも鳴らす場合はこちらのDIから分岐させます。

ちなみにDIの信号は多くの場合SSLのプリアンプで受け、1176を通して録ります。



1176かけ録り!!!???みたいに思うかもしれませんが、密度が増すので、そのままアンプを鳴らしたものより
このライン信号をリアンプしたほうがバランスよく太い音が録れます。
以前は素の音もセーフティーで録っていましたが全然使わないので最近は録ってません。
リアンプやアンプの音を録る時にはNEVE 1066を使うことが多く、少し固いと感じた時はMANLEY ELOPでTUBEの質感にします。
また、ジャンルによってはベースのヘッド(SVT2Proなど)のラインの音も録ります。混ぜる場合は位相に注意が必要です。

リアンプにはAMPEG B-15N(1962年製VINTAGE)、AMPEG AVT2Pro、BASSON BA610を使います。
マイクはNEUMANN U47FET、C&T el diablo、D112等を使います。



AMPEG B15-NとNEUMANN U47FET。ド定番のセットです。




強烈な密度の低音を放つBASSONのキャビネットには二本のマイクを立ててブレンドすることが多いです。


エレキギターは持ち込みのアンプ以外ではMATCHLESS Tornado、FENDER DELUX AMP(VINTAGE)が良く使われます。



その他VOX AC30TBX、FENDER TWIN REVERB、MARSHALL JCM800等も人気があります。



マイクはSENNHEISER MD421、e609(Black)、SM57(USA)、C&T el diablo等をよく使います。

Fractal AudioのAXE FX2を使うこともありますが、その場合も実際キャビネットを鳴らして録る事がほとんどです。



その際BASSONのキャビネットが活躍します。
既に生産完了しており、メーカーが無くなってしまいましたがMORGにはBASSONギターキャビネットが全種あります。
レコーディング向きの本当に素晴らしいサウンドのキャビネットです。





アコースティックギターなどはNEUMANN U87やU67、KM56を使うことが多いですが、弾き語りの場合は比較的多く立てます。



この時はNEUMANN U67s、KM56、MD421white、オフマイクにAKG C414EBが立っています。

この時のプリアンプ類は

U67s→NEVE 1066→1176H
MD421→NEVE 1066→1176E
KM56→SIEMENS V276→Pultec EQP-1A3→1176AE
C414EB→ISA115HD→SSL MASTER BUS COMP

になっていました。

SIEMENS V276がとてもアコギにマッチします。




左のU273は世界で最初に出来たソリッドステートコンプだそうです。
現状でも使えますが出力レベル、スレッショルド等将来改造しようと思っています。

MORGにはレコーディング用に使える楽器類も用意しています。



左からGibson Les Paul Standardに70年代のPAFをのせたもの、1979年製Martin HD-28、FENDER MASTER GRADE 1961プレベ、
Gibsonカスタムショップ製B-25です。
特にアコギは多くのレコーディングで使っていただいています。



こちらがFENDERカスタムショップ製1952タイプテレキャスターと同じくカスタムショップ製1967ストラトキャスターです。
写真には写っていませんがGibsonのSGもあります。

このテレキャスとストラトもよくレコーディングで使われています。
楽曲に何か一味足したい、イメージが合わない場合に楽器の選択肢があるというのは結構重要と思います。

鍵盤はNORD STAGE 88EX、ピアノ音源にAddictive Keys等を用意しています。



SSL 9000KのチャンネルストリップかNEVE 1066で録ることが多いです。
MIDIも同時に録音する場合があります。
Addictive KeysとUAD2オーシャンウェイスタジオプラグインの組み合わせは革命的と思います。


ボーカルは様々なマイクを使いますが、NEUMANN U67、U67s、SOUNDELUX U99B、VIOLET DESIGN Flamingoを良く使います。
また、ポップガードは数種類使い分けています。もちろん音に直接影響しますので適宜選択します。



SONY C-800Gもここぞという時には大活躍します。


(Photo from
NAMU SHOW

AKG THE TUBE、Geffel UM92S、NEUMANN KM56などのTUBEマイク、RCA77DX、RCA44BX等リボンマイクもたまに使います。

TELEFUNKEN U47AEが仲間入りし、NEUMANNマイクも随分と増えました。


プリアンプはTELEFUNKEN V76sやNEVE 1066等を使いますが、TELEFUNKEN V76sがここしばらくのファーストチョイスです。
ISA116、SSL9000K、などもたまに使います。



コンプレッサーはUREI 1176Hや1176E、1176AEを使い分けます。
時々TUBETECH CL-1Aと言う感じですが、1176がやはり使いやすく、選別した個体なのでサウンドも本当に気に入っています。

EQは使わないことのほうが多いですが、GML8200を通すことはあります。



多いのがNEUMANN U67→TELEFUNKEN V76s→UREI 1176Hで、GML8200が入る場合は最終段に入ります。

レコーダーはProtools HDXシステムです。



MORGでは2011年末という関西最速、日本でもかなり早い段階でのHDXシステムを導入しました。
多くのバグもありましたが、バージョン10.3.5で落ち着きました。サウンドは最高です!
メインシステムにはUAD2 OCTOとQUADを積んでいます。



デジタルレコーディングはデジタルになるまでにどれだけサウンドを劣化させないかが肝になってきます。
これはもう10年以上前から師匠が言っていましたし、世界的に超有名なエンジニアも『失われたクオリティーは二度と戻らない。』
と言っていました。

なので、MORGではマスタークロックにルビジウムを採用し、ANTELOPE TRINITYも導入しています。

何より日本でも導入しているのは一部トップエンジニアくらいであろうPrism Sound ADA-8XRをメインのADにしています。
16CHのADコンバーターですが、何とHDXシステムより値段が高いという世界最高レベルの超ハイエンド機材です。
サウンドはもう最高です!このADコンバーターほど密度があってナチュラルなサウンドのADコンバーターは知りません。
AVIDのHD I/oがADA-8XRに似ていると言われた時期がありましたが、さすがに過大評価です。
もちろんいいADと思いますし、192と比べればADA-8XRに寄っている印象ですが、やはり比べると少し硬めです。
多チャンネルが重なるとやはりこの差は大きいです。

あまり比較できる機会も無いとは思いますし、まず見かけないのですがデジタルでレコーディングする以上入り口は
妥協できないというMORGの渾身のこだわりです。まあ、誰も気にしないような位置にラックマウントされているんですが。。。

約二分半でこれらを解説したのがこちら。

後半はミックス、マスタリングになります。





このような感じで音を収録しています。

例のごとくここまで読んだ方は相当熱心な方かマニアックな方と思います。
なんのこっちゃわからんけど機材の話でしょ??ってバンドマンは勉強しましょう。

いつまでも初心者用も楽器ばかり触っていてもなかなか技術は向上しませんよね?
もちろん物凄い最高の楽器を弾いている方が初心者用の楽器を触ってもいい音とかそういう話もありますが、
それって極論にせよ色んな経験を経てのことと思うんですよね。

他の事に置き換えても、ファミレスの料理しか食べたことがない人間が高級割烹料理や高級フレンチって作れないわけで。
逆に高級料理を作っている人がファミレスの食材をアレンジすることは出来たりとか。
それって高級だからか、高いからとか、食材や道具がいいとかと言う話ではなくて、どれだけ基本の経験をしっかり正当に
積み重ねているかって事だと思います。

じゃあレコーディングでその正当な経験を積むのって何よって、ちゃんとプロフェッショナルなレコーディングを経験すること
なんですよね。本当はプロデューサー、ディレクターなんかも居たほうがいいんですけど。

ちゃんとレコーディングしないと自分の音に向き合うことも経験出来ないし、アドバイスも受けられない。
テクノロジーが進化し、手探りでも調べながら色んな事が出来る時代ですが、正当に経験を積むと言うのは逆にとても
難しい時代になったとも思います。何でもなんとなくは出来ちゃいますから。
でもやっぱりなんとなくの結果なので得るものもなんとなくなんですよね。
決定的な感動やひらめきを得るのはなかなか難しいと思います。

自分たちも師匠や一線で活躍する先輩、仲間との交流があるから毎日成長できていると思っています。
もしもそんな素敵な出会いが無かったとしたら、MORGは無かったのは間違いありません。
そして、そういう出会いや人の繋がりがあるのもまた、スタジオであり、プロというものであると思っています。
現場には雑誌やインターネットでは得られない情報はもちろん、縁があります。

MORGは音質にこだわっているというより、音楽、本質にこだわった結果進歩してきたのだと確信しています。

その音楽をより素晴らしく音楽作品として残すためにはさまざまな経験、選択が必要であり、それらを高めるには
人と人の繋がりはもちろん、機材や楽器もやはり必要です。

限られた環境でも音楽作品は確かに作れますし、否定もしません。

しかし、多くの経験を経たミュージシャンがそういった製作を行うことと、経験の浅いミュージシャンがそういった環境や、
そこそこの環境で製作を行うことはやはり経験と言う意味では一歩とどかないのだと思います。



硬い事を書いていると感じる方もいると思いますが、現場は常に楽しく進行しています。
心地よい現場でなければいい作品は生まれないと思います。
(時に鬼軍曹になる時もありますが。。。)

そんなことを感じながら少しでも感動を生み出せるように日々MORGは音楽作品を生み出しています。




音楽作品を作ることは簡単になったようで、感動できるような体験はなかなか出来ません。
本当に自分の音楽に真剣に向き合い、その上でMORGを選んでいただいたならプロ、アマチュア問わず最善の結果になるよう
我々もチームの一員として向き合います。
『いらっしゃいませ。ありがとうございました。』のような関係ではなく、一緒に真剣に音楽に向き合うのは当然の事と思います。

ここまで読みきった方がいれば相当奇特な方と思いますが、もし機会あれば一緒に音楽作品を作れれば嬉しいです!!!!


ミックス&マスタリング編はこちら





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