MORG MIX MASTERING 2013

MORG MIX MASTERING 2013


2013年になり、MORGのシステムも多くの変更を経てひと段落した感がありますので、
オンラインや預かりでのミックス、マスタリングの解説をしてみようと思います。

世の中にはオンラインでミックス、マスタリングをやりますというスタジオはピンからキリまでありますが、
その多くはデジタル内部での処理や、充分なアウトボードが無い状態でのビジネスライクなものと思います。

MORGでもミックスの内部処理はUAD2などで行いますが、頂いた素材があまり気に入らない場合は個別トラックで
アウトボードを通しなおしたり、リアンプを行う事も多いです。
MORGでのレコーディングの場合、音を作ってレコーディングしますのでアウトボードを通しなおすことはあまり無いですが、
リアンプで鳴らしたギターをブレンドなどはよくやります。

そして素材が揃ってミックスをして、マスターフェーダーにプラグインを挿してバウンス!

『完成しました!!!!やったー!!!!』

みたいなのが多くのミックススタイルと思いますが、MORGではミキサーに信号を立ち上げ、ミックスマスターにアウトボードをインサート、
そのミックスマスターの次にマスタリングアウトボードをチェーンすることで、ミックスとマスタリングを同時に行いながら、
『ミックスのマスターへの処理』と、『ミックス後の2MIXへのマスタリング処理』というように明確にその処理の範囲を分割しています。
もちろんミキサーのミックスマスターの音、マスタリング用アウトボードを通った音を瞬時にモニター切り替えが可能です。

ここで言うマスタリングは近年の用途での『2MIXに対するサウンドの処理』と定義しておきます。

『本来はCDのスタンパーを作る行程云々…』とかはどうでもいいですし、MORGでもCDプレスを取り扱っていますが
その本来の意味とやらでは現在使われていません。
ウィキペディアでも広義と狭義としてまだ名残は記載されていますが、スタンパー作成をマスタリングと呼ぶ事は今や無いです。
たまに個人のブログなんかに好き勝手書かれていたりしますが、この手の現場を知らない方の情報は無視していいと思います。


では、解説に移ります。

まずはミックスするにあたりSSLのラック式ミキサーに16CH、8ステレオとしてProtoolsHDからの信号を立ち上げます。
先にも書いたとおり、内部での各トラックの処理はUAD2などのプラグインを使います。
しかし、この方法だと多くの信号はデジタルの演算ではなく、電気信号としてミキサー内部でミックスされます。
もう随分長くこのSSLのミキサーを使っていますが、本当に凄く気に入っています。





そしてこの状態でProtoolsHDを使ってミックスしていくのですが、ミキサーのマスターインサートにはミックスマスターバス用の機材
がチェーンされており、インサートボタンを押すとそれらがミキサーのマスタートラックにインサートされます。


2013年現在の最新のルーティングをここから紹介。


まずは初段にGML8200
説明不要の世界初のパラメトリックイコライザーで天才ジョージ・マッセンバーグ先生の設計です。
プラグインのMDW Hi-res EQも愛用しています。
過去に一度手放したんですが買い戻しました。



ご覧のとおりマスターのスイッチはオフになっており、『通すだけ』です。
でも確かにサウンドがまとまるんですよね。いらないピーク成分が収まるというか。
師匠が大好きなEQというのと、『俺、あのEQ好きやわ。通しただけでそれっぽい音になるやん。』という言葉を追体験したかったのも
再度導入した理由です。



次にSSL FXG384です。
言わずと知れた本家SSLの4000シリーズのマスターバスコンプを搭載したものです。
イギリスの死ぬほど有名なプロデューサーが持っていたものだそうです。



メイクアップゲインを上げるとキックやスネアにパンチが加わり、まさにSSLの音になります。
ここで後段に送る信号量も制御できます。
ミキサーのラックにもマスターバスコンプがありますが、こちらはマスターには使いません。



その次はFairchild602です。
聞き慣れない型番ですが、あのFairchild670と同じ入出力トランスを持っています。



ラジオ局のマスターに使われていたディエッサーのような機材ですが、OFFのポジションにするとゲイン回路とトランスのみ経由するので
その状態で使います。
これが物凄くマジカルな良さで、見た目に反してビンテージ臭くならず、音像が大きくなって一歩前に出る感じです。
一応完全バイパスも出来るようにしていますがこれはいまのところ100%通してます。
同様の使い方をFairchild670でされる方もいらっしゃいます。
また、高域にしかコンプはかからないので、設定5段階の1くらいだとTUBEの感じを足す感覚で使えます。
ちなみに逆に設定5までやるとほんとに昔のラジオのような暖かく丸いサウンドが作れます。



その次にSiemens Ela 75-06bフルゲルマニウムEQです。
知る人ぞ知るイタリアシーメンスの名機で、TONE FLAKEのMODによりアウトプットトランスにNEVE1073からはずしたマリンエアを搭載。




通すだけで音がオーガニックになります。
通すだけで音が変わるという意味ではこのEQがもっとも変化が大きいと思います。
こちらはバイパススイッチもつけていただき、必要と判断した場合に使います。
オーガニックなサウンドが欲しい時はほんとに最高です!



そして最後にPultec EQP-1A3の連番ペアです。




これも基本的には通すだけです。トランスとAPI2520を経由させます。
なんというか密度が増します!EQもまさに魔法のEQ。。。
触っているうちに感動しています。。。
TUBEのEQP-1Aが有名ですが、ミックスバスはあえての2520仕様のEQP-1A3です。
TUBEの質感はマスタリング用チェーンのMANLEY vari-muで加えます。



ここまでがSSLのミキサーのマスターバスにインサートされています。



これらを通った音がSSLミキサーのマスターから2MIXでマスタリング用のチェーンに送られます。

(この信号を一旦DSDに録る場合もありますがそれは割愛。)

2MIX素材でマスタリングの依頼を受ける場合も、DAWのマスタープラグインをフルバイパスしたような2MIXであれば
これらをインサートします。

逆にミックスマスターの処理が出来ている2MIXであればインサートははずします。

そして微妙にラウドな2MIXの場合はDAWではなくSSLミキサーのアウトプットでトリムします。




ここからが2MIXに対するマスタリング用のチェーンです。



まずはAVALON DESIGN AD2077。
世界的に有名なマスタリングEQです。




こちらもTONE FLAKEさんでキャリブレーションをしていただいています。
『PURE CLASS A MASTERING EQUALIZER』の表記に偽り無し!震えるほどいい音になります。
こちらはLowとHiも0.5db刻みのカスタム版ですので微妙な調整もお手の物です。(通常は1db)
お値段も震えるほど高かったですがこれ無しでは仕事にならないほど気に入っています。



そして次にMANLEY STEREO vari-mu COMPRESSOR。
定番の機材ですがこれまたTONE FLAKEさんで調整していただきました。



こちら、最も初期のロットで、Fairchild670と同じ6368というvari-mu管を使っています。
現在GEのビンテージ6368管が入っており、予備にも1ペア持っていますが、ビンテージの6368はもはや滅多に市場に現れません。
(ちなみに復刻の6368はあるので今のところ近い将来6368管が使えなくなることは無いようです。)
もうほんとに表現が魔法ばっかりですが、魔法のコンプです。リダクションはほとんどさせず、TUBEのドライブ感、音量感を得ます。



そしてelysia alpha compressor。
マスタリング用の様々なプロセッサーが入っており、MS処理、ドライ/ウェットのミックス、トランスのオンオフ、テープサチュレーション、
独自の発想の補助EQなどEQ以外のマスタリングに対して必要な機能が多く入っています。



大胆な音作りよりもまさに他のチェーンでは手が届かないわずかな部分をまさに細かく突き詰めてくれる印象です。
アンプの音がとても明るくて抜群に音が前に出ます!



そしてこれらの機材を経てLAVRY GOLD AD122-96 MXかPrism Soun ADA-8XRによってデジタルに変換され、
Protoolsに録音されます。



LAVRY GOLD AD-122 96MX輝いてます!マスターのクオリティーを損なわずアナログ信号をデジタルに変換します!





デジタルのマスタークロックはAntelope TRINITYです。
外部ルビジウム発信機にロックしています。


その後、デジタル領域で微調整を行ってサウンドが完成します。



この方法であれば多くのアウトボードを使いながらどこにも負担をかけることなくSNも抜群にいい状態でサウンドを突き詰められます。

プラグインも好きですが、見た目が実際の機材と同じになり、どんなに技術が進歩したと言ってもそれは演算であって、
電気信号ではありません。
やはり電気信号を扱うアナログでないと達成できない事は沢山あるように感じます。

まあ、模倣した演算ではなく本物の電気信号で本物の音を作っているので当然といえば当然な気もしますけども。。。



こんな感じでMORGではミックスやマスタリングを行っています。

インターネットや郵送でファイルを送ってのミックスやマスタリングは東京、名古屋の依頼が多いです。
レコーディングが立て込んでいると短納期の案件は難しいですが、納期に余裕を持って依頼していただければミックス&マスタリング
であっても想像より安く、しかしクオリティーは落とさずに対応可能です。

MORGは紹介制ですが、2013年からはFacebookで『いいね!』していただいている方、門垣か武田と友達、あるいは
実際に門垣か武田と共通の友人がいる方であればご依頼いただけます。
様々な人物が出入りしますのでなかなかオープンな対応が出来ませんが、相当フレンドリーな雰囲気のスタジオと思います。
鍋を作ったりするくらいですから。。。



マスタリングの依頼も色々やらせていただいていますが、Protoolsであればミックスからやったほうがよい結果に出来る事もあります。
音楽作品を作ることは簡単になったようで、感動できるような体験はなかなか出来ません。
本当に自分の音楽に真剣に向き合い、その上でMORGを選んでいただいたならプロ、アマチュア問わず最善の結果になるよう
我々もチームの一員として向き合います。
『いらっしゃいませ。ありがとうございました。』のような関係ではなく、一緒に真剣に音楽に向き合うのは当然の事と思います。

ここまで読みきった方がいれば相当奇特な方と思いますが、もし機会あれば一緒に音楽作品を作れれば嬉しいです!!!!


レコーディング編はこちら




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