はじめに

"プロユース"のスタジオの"定義"とは?

コンピューターベースのハードディスクレコーディングが普及し、
多くのレコーディングスタジオが出来た昨今、
老舗スタジオの閉鎖や中途半端なレコーディングスタジオの増加等により、
特にインディーズのレコーディングは多くの誤解と問題を抱えるに至りました。
これらの要因による品質の低下と安易な意識から悪質なレーベルも一時増加し、
被害も多く聞いています。
老舗スタジオも価格を改定し、奮闘しているところもありますが、
閉鎖するスタジオも少なくなく、ベテランエンジニアの退職、管理職への移行等もあり、
人材不足に悩んでいるスタジオも少なくありません。

現在明確な“プロユースのスタジオ”という定義は存在せず、
好きなように名乗る事が出来ます。
ここでは、現場、業界を見て、アーティスト、同業者の意見を聞き、
プロとして仕事をこなす中でMORGが考える“プロユースのスタジオ”に必要と思われる
事項とこだわりを取り上げていきたいと思います。

果たして満足に様々なアナログ機材も触れない環境で、安価なシステムと
プラグインで行うような録音作業をこなす事で本当にプロと名乗れる作品を
仕上げる技量を身に付けられるものなのでしょうか?

まして、ミックスのみならずマスタリングの技術までプロと名乗れる次元で
身に付けられるのでしょうか?

こだわった楽器を必死で手に入れていい音を探求する本気のアーティストが
機材の選択肢の無い、特色のあわない、又は程度の低いスタジオを選んでしまうほど
録音環境が曖昧に認識されている事は問題ではないのでしょうか?

そしてこういったおかしな状態が一層広まっていくならアーティスト、
音楽シーンに未来はあるのでしょうか?

メジャーアーティストのレコーディングの形態や使用機材、準備段階や日々の努力などの
知識も無い状態でレコーディングの過程でさも当然にプロミュージシャンのCDと比較している事に
何故違和感を感じないのでしょうか?

アーティスト、エンジニアそれぞれがプロあるいはそれ相応の努力を持ってはじめて本当の作品は生まれます。

まずは知識をつけてその上で正しい経験を身につけなければ一生目的に到達することなど出来ません。

MORGの営業目的ではなく、アーティストや業界関係者向けの内容がほとんどですので一読していただき、
もし多少のお役に立てれば、結果業界がより健全に機能すると信じて執筆しています。




※以下2012年7月加筆

2012年7月現在、大手スタジオは閉鎖が相次ぎ、2012年で一口坂スタジオ、湾岸音響が閉鎖、
7月いっぱいでMAGNET STUDIOが閉鎖と言う状況です。
(2011年には麻布Oスタジオも閉鎖。)
この状況はスタジオで伝承されるべき文化や技術、姿勢などの伝達が次の世代に円滑に行えなくなる非常事態です。
職人としての伝承や音楽体験や先輩後輩関係による伝承の場となるのが歴史ある大型スタジオです。
これは音質に関わる話だけではなく、日本の音楽技術、文化伝承の話です。
幸いにも僕はそういった大手スタジオに日常的に出入りする先輩に恵まれ多くのことを気付かせて頂きました。
しかしながらこのコラムを書き始めた当初に感じた多くの疑問は確信に変わるばかりです。
ここからまた本来のレコーディングについてつらつらと書き始めようと思います。
自称プロには理解されにくく、本当のプロには当たり前なことがほとんどですが、何かの役に立てれば幸いです。


門垣 良則


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